この幼稚園は昭和8年に、亀井サキにより創立されて、今年で88年となる、歴史のある園です。車道から路地を入った奥まった所にあるため、目立ちませんが、門から一歩入るとみどり豊かな園庭が広がり、特徴ある園舎が見えます。
以前、一人の卒園生の小学生が、「木の家」という題で書いた学校の作文で、次のように一説を綴りました。「私の通っていた幼稚園のおへやは、全部木でできていて、遊んだり寝そべったりするといいにおいがしました。あたたかくて、みんなの声が響いていました。おへやで友達や先生といろんなことをして遊んでいるときは、森の中にいるみたいで気持ちよく、ここにずっといたいな、と思うところでした。」卒園生の心に幼稚園の暮らしがこのように残っていることは、嬉しいことです。
この園舎に代表されるように、園では、子供たちが成長する「環境」を大切に考えます。子ども たちが全感覚でとらえ、触れるものは、幼児期の成長を支えるために ふさわしく十分考慮されたものを整えております。四季の移り変わりとともに 、子供たちが自然の中で暮らしていることが感じられる庭、木のぬくもりが十分感じられる園舎、自然素材で子供たちが想像力を持って遊ぶことのできる遊具。また、人としての環境として、一クラスの中に3学年の園児が暮らす年齢縦割り保育、そして保育者は、在籍人数により1クラスに一人~二人の担任と、一人の補助教諭が子供たちを見守ります。
園の長い歴史の中で、従来の年齢別保育から、年齢混合の縦割り保育に切り替えてから、24年ほどになります。一クラスの中に、3才、4才、5才が一緒に生活し、それを担任教諭が見守る、まるで家族のような暮らしです。しかし、同時に年齢別の活動も重視し、学年に分かれた時間もカリキュラムの中にしっかり入っています。
年齢縦割りのクラスの生活はどのようでしょう。
年少さんは、初めてのことばかり。年上の子どもにお世話をしてもらいながら園生活を始めます。年中さんになると、園生活に慣れ、遊びを活発に広げます。またお茶当番等の活動を喜んでいたします。年長さんは、クラスの中で最高学年として、遊び、生活全般いおいてクラスをリードします。1学期から縫物、染め物、梅干しつくり等の手仕事、又、課題活動を、喜びと興味を持って行いますが、このようなことを、 年下の子どもたちは間近で眺め、大きくなったらこんなことできるんだ・・と憧れ、おおきくなることを楽しみにします。一方、年上の子どもにとって、年下の子どもから慕われ、お世話をするのは、心弾むうれしいことなのです。このように、兄弟のようにお互いに育ちあう日々です。
また、自由遊びと課題活動を同等に重視していることも特徴です。文部科学省の、「幼稚園教育指導要領」には、「自発的な遊びを通して、学ぶ」という趣旨が明確に示されていて、これに従い、この園では子供が自由に遊ぶ中に、多くのことを考え、実践していけるように環境を整えます。
はじめて園を訪れた方は、子ども達、先生の穏やかな様子に少し驚きます。幼稚園は賑やかで元気なところという一般的な印象があるかもしれません。この園の、落ち着いた生活のもとにあるのは、年間を通して一貫した、生活リズムを徹底して大事にしていることです。ですから、運動会や発表会が近くても、行事のためだけのいわゆる「練習」は極力行いません。自由遊びの時間と、クラスの集まりや課題活動(開放と集中)が交互に配置された、1日の流れを、子ども達は生き生きと過ごし、丈夫な体が作られ、その結果おのずと現れる一人ひとりの個性が伸びていきます。「ふつうの日」こそ、最も大切な日なのです。
自然には、多くのリズム、法則があります。夜と昼、眠りとめざめ、四季の巡り、潮の満ち引き等・・・園の生活にもこの自然にリズムがあることにに習い、年間変わらない生活リズムの中で進みます。
また、幼児は、周囲の大人のすることを模倣して様々なことを獲得します。「学ぶ」とはまねること、「まねぶ」という語源からうまれた言葉との説があります。ご家庭でも、お母さんのすることを見て子供お子さんはお料理や掃除等をやりたがるでしょう。まねをされる人、模倣のお手本となるのは、私達大人です。この事を私達保育者は常に心に置き、立ち振る舞い、心の在り方に留意します。
「幼稚園で遊ぼう会」という、未就園児親子のための会が5~12月までまであります。予約なし、お子さんの年齢制限もありませんので、どうぞ遊びにおいでください。お子さんが遊ぶ姿を共に見ながら、お母さん、お父さんとお話ししたいと思い、皆様をお待ちしております。 また、年間の園庭開放、6月以降は園児が活動する時間帯の見学もありますので、どうぞお問い合わせください。