幼稚園の子どもたちが働き盛りとなる50年後、人工知能(AI)により、これまでに人間にしかできないと思われていた仕事が、 コンピューターやロボットが代用できるようになり、子どもたちの65%は、今は存在しない職業に就くと予測されています。
今後10-20年で、現在の職業の約47%が自動化できるという試算もあります。
子どもたちはそのとき社会でどうやって生きていくのでしょうか。
そのマニュアルはありません。 だから、子どもたち自身が考えるしかないのです。
保育者はそれを強く意識して、「子どもたちが自分で考えて生きていくための基盤」を育てることが大事なのです。
「ああしなさい」「こうしなさい」という保育者の指示が多いと「自分で考える力」は育ちません。
指示されたことを正確に行うという能力は、人間よりもコンピュータやロボットのほうが優れています。
それでは、20-50年後の社会で子どもたちは対応することができません。
「子どもたちが自分で考えて生きていくための基盤」は「非認知能力」だといわれています。
認知能力とは、学力や知能指数など数値化できる能力、非認知能力とは、自立心や社会との関わり、 思いやり、協調性、あきらめずにやり抜く力など、数値化できない力です。
日本の幼児教育で昔からいわれてきましたが、こうした考え方が大きくクローズアップされてきた背景には、 米シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授を中心とした経済学者や心理学者が、 非認知能力と将来その子が社会的に成功したかという因果関係を、 子どもたちの追跡調査から明らかにしたことにあります。
この調査は、同じような家庭環境の子どもたちを対象としたもので、 質の高い幼児教育を受けた子どもたちのほうが、そうでないグループよりもよい仕事に就き、 生涯賃金も大きく上回るという結果が出たのです。
この質の高い教育とは非認知的な教育であり、知能指数の高低はあまり関係ないこともわかりました。 しかも、非認知的な教育を、小学校以降の子どもたちに施しても、効果が薄かったのです。 つまり、人の一生の中でも幼稚園の子どもたちへの教育が、その子の人生を豊かにするうえでとても 大切なことがわかってきました。
例えば、子どもが園庭で遊んでいます。保育者はそれをボーと眺めているだけではダメです。
大事なのは「遊びがスタートする」「遊びが継続する」中で「どんな気持ちで遊んでいましたか」。 「どんな工夫をしましたか」。10人居れば10人の遊びがあります。 それを「どのように子どもが自分で考えて遊んでいましたか」を保育者として見取り、 「ここが成長しました」「これも学びました」と具体的に説明するのが保育者の役割です。 これが20-50年後、「子どもたちが自分で考えて生きていくための基盤」となるのです。
本園は、保育者の研修を奨励しています。
なぜなら、「子どもたちが自分で考えて生きていくための基盤」を育てるためには、 子ども一人ひとりの興味や意欲を見取り、適切な環境を提供することのできる、 経験の深い力のある保育者が欠かせないからです。